【RWC】決勝&3位決定戦試合結果&ランキング
試合結果
ニュージーランド 11 v 12 南アフリカ
史上最多4回目の優勝を争ったRWC2023決勝は、まれにみる激戦の末、南アフリカが三度の1点差ゲームを制し、自身初、大会史上ニュージーランドに続く2度目の連覇を果たした。南アフリカのシヤ・コリシ主将は、ニュージーランドの元FLリッチー・マコウ主将に続く2人目の連覇達成主将となった。
南アフリカは、序盤から地域や固いディフェンスで主導権を握ると、この日先発のSOハンドレ・ポラードのPGで徐々に点差を広げ、得意の接戦に持ち込む巧みなゲームコントロールを見せた。あわやトライという場面も見せたものの、結局得点は前半に挙げた4本のPGのみで、追いすがるニュージーランドの厳しい攻撃を凌ぎ切って準々決勝、準決勝に続く3度目の1点差ゲームを制し、ウェブ・エリスカップの栄冠を手にした。
コリシ主将やWTBチェスリン・コルビのイエローカードもあり、苦しい時間帯もあったが、ほぼ40分間で人数有利となったことや、ポラードのキック精度の高さやディフェンスでの貢献はもちろん、SHファフ・デクラークの強かさとプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたFLピーター=ステフ・デュ・トイの攻守にわたる活躍がチームを勝利に導いた。
ニュージーランドは、序盤から突き放したい思惑とは裏腹に南アフリカの強固なディフェンスに手を焼き、自陣のペナルティで南アフリカに主導権を渡すと、PGを積み重ねられて得点の先行を許し、終始追いかける展開になってしまう。加えてFLサム・ケイン主将が27分、危険なタックルでレッドカード退場となり、形勢は一気に不利に。それでも攻め続け、一度取り消された幻のトライ後の58分にFBボーデン・バレットが飛び込んで待望のトライを奪うも、難しい角度のコンバージョンキックをSOリッチー・モウンガが外し、1点ビハインド。その後73分に相手陣で南アフリカWTBコルビの故意のノックオンでのペナルティ(イエローカード)のチャンスを得たが距離のあるPGをCTBジョーディ・バレットが外し、逆転ならず、もつれにもつれた試合はそのまま1点差で終了した。
大会最多トライとなったWTBウィル・ジョーダンはノートライのまま71分にピッチを去った。
イングランド 26 v 23 アルゼンチン
開催前は結果を不安視された母国イングランドが、SOオーウェン・ファレル主将を中心に下馬評を覆し、得意のキッキングゲームを制して優勝1回、準優勝3回に次ぐ銅メダルを手にした。アルゼンチンは、過去最高位の3位に届かず、ベスト4で今大会を終えた。
イングランドは、プール初戦から徹底した得意のキッキングゲームを展開し、開始早々のPGに続き7分にはNo.8ベン・アールがトライを獲得。ファレル主将のコンバージョンも加えて幸先の良いスタートを切ると、その後もPGを積み重ねて試合を優位に進め、地域やポゼッション(ボール保持率)でも優位に立った。その後徐々に盛り返してきたアルゼンチンの反撃にあい、前半を16対11の5点リードで折り返すと、後半早々の42分には逆転を許すトライとコンバージョンを献上し、展開はアルゼンチンのペースに。それでも慌てないイングランドは、直後の押し込みからチャージダウンを決めたHOテオ・ダンがそのまま飛び込んでトライを決め、コンバージョンを加えて再びリードを奪い、65分のPGも加えて粘るアルゼンチンを振り切り、最終戦を勝利で終え、有終の美を飾った。
どのような状況でも慌てず自分たちのラグビーを貫き通したことが当初の不安を振り払う結果をもたらしたが、栄光にあと一歩及ばなかった背景には攻撃の決め手やPG、DG以外の得点源の不足があり、年明けから始まる6ネーションズや次大会に向けたまた新たな模索が続くものとみられる。
アルゼンチンは、序盤こそ劣勢に立たされるも、強力なFWと南米らしい奔放な展開ラグビーで徐々にペースをつかむと、SHトマス・キュベリがゴール前のラックから飛び込んで待望のトライを奪って五分の展開に持ち込み、後半開始早々の42分には、SOサンティアゴ・カレーラスがイングランドディフェンスを抜け出して華麗なトライを決め、一時逆転に成功した。しかし、そのカレーラスが直後の自陣ゴール前で痛恨のチャージダウンにあい、再びリードを許すと形勢は一進一退を繰り返し、最後まで粘りを見せるも決め手なく、逆転には至らなかった。
決勝トーナメントの組合せに恵まれたとはいえ、苦しいながらもプール戦を勝ち抜き、ベスト4に進んだ実力は南半球の雄の力を存分に見せた戦いだったといえるが、過去最高位の3位となった前回のフランス大会で活躍したSHアグスティン・ピチョット主将(当時)やSOファン・マルティン・エルナンデスのような飛び抜けたスター選手が不在の中、決勝を戦った南アフリカ、ニュージーランドに追いつき、追い越すための 戦略が求められる。
総評
試合巧者ぶりが光った南アフリカが4度目の優勝とニュージーランドに続く自身初の連覇で幕を閉じた。ニュージーランドは2015年以来の優勝奪還はならず、1点差で涙をのんだ。
南アフリカは、伝統の強固なディフェンスと屈強なFW陣を前面に押し出し、常に冷静さと強かさを発揮してどんな状況からでも試合を互角以上に持ち込む僅差で勝てるラグビーを見せつけ、下馬評で欧州勢に劣る評価を覆しての大きな栄冠をつかんだ。特に決勝トーナメント進出後は史上初めてとなる全て1点差の勝利で、交代選手のレベルが極めて高い選手層の厚さで終盤での強さが際立った。世界ランキング1位に返り咲いたとはいえ、飛び抜けた実力差があったとは言えず、対戦相手からすれば「いつの間にか負けていた」といった心境だったのではないか。その勝負強さを支えた一つの大きなポイントになったのは、唯一の弱点であった安定した得点源を怪我から大会期間中に復帰したSOハンドレ・ポラードで補えたことにあったのではないか。元々大会前の怪我のために離脱していたポラードだったが、HOマルコム・マークスの怪我・離脱を機会にスコッド入りし、復帰していきなりPGを決めるなど、その安定した力を証明すると、決勝では先発に復帰して、最終的にはSHファフ・デクラークとともに連覇達成ハーフバックとなった。決勝で唯一の専門HOムボンゲニ・ムボナンビが怪我で早々に退場し、セットプレー、特にラインアウトで劣勢に立たされたのは皮肉なことではあったが、決勝トーナメントを勝ち抜く術を手に入れた点で首脳陣の選出眼の賜物とも言えるのではないか。いずれにしても、2023年の栄冠は、勝負強さ、試合に負けない強かさ、反則をしない強固なディフェンスの際立った南アフリカに輝いた。
ニュージーランドは、プール初戦で開催国フランスにプール初となる敗戦を喫してからチームを立て直し、迎えた決勝でそれを支えたFLサム・ケイン主将がまさかのレッドカード退場となり、試合前に想定していたであろう戦略、戦術が消し飛んだ。とはいえ、総数1,400キャップ以上となるベテラン中心のチーム編成でどんな展開でも活路を見出す底力は健在で、多くの時間帯を人数不利の状況で戦いながらいくつかの勝機を獲得したところはさすが。しかしながら最後は、長年のライバルでもあり、相手を知り尽くす試合巧者の南アフリカにわずかに届かなかった。あと1本のコンバージョンやPGが決まっていれば、という見方もできるが、大会前から不安視されていたプレースキックの不安定さを払拭し切れなかったという観点からは、チームの戦略、戦術が南アフリカのそれを上回れなかったということであり、厳しい言い方をすればそうした展開にまんまとはまってしまったところで勝負あったのではないか。明言はしていないが、チームを支えてきたLOサム・ホワイトロック、SHアーロン・スミス、SO/FBボーデン・バレットらスター選手がチームを去る日も近いと思われ、今後に向けては新ヘッドコーチの下、新主将も含めた次の世代のオールブラックスを作り上げていく時期に入ると見られ、決勝では不発だったが若く力のあるWTBウィル・ジョーダンなどの若手を中心に、伝統のスピードと展開力を新たなチームでどう磨き上げていくかに注目したい。
イングランドは、キッキングゲームに代表される徹底した自分たちのスタイルを貫き通し、3位とは言え、最後を勝利で締め括り、大会前の不安を一掃するような結果を残した。欧州で唯一の優勝経験と準優勝3回の力は伊達ではなく、組合せに恵まれたことは差し引いても、ベスト8でトーナメントを去ったライバル国フランスやアイルランドを尻目にW杯での「負けないラグビー」を見せつけた。ただし、再三取り上げているように、強豪国に勝ち切るための飛び抜けた実力はなく、年明けからの6ネーションズでは苦戦も予想されることから、次の大会を見据えた決定力の底上げが必要になると見られる。幸い欧州勢では随一の選手層の厚みを持ち、発祥国らしい下部を含めた組織力はそれをしっかりと後押しすることだろう。
アルゼンチンは、初戦イングランド戦で苦杯をなめるなど苦しいプール戦ではあったが、今大会でも優勝、準優勝を果たした南アフリカ、ニュージーランドやオーストラリアとの切磋琢磨で、スター選手不在ながらも安定した実力を発揮できるまでに成長したところを見せた。ただし、今大会で引退を表明しているSOニコラス・サンチェスらベテランからの世代交代が進んでいくことや、多くは海外(特に欧州)クラブに在籍していることから、先を見据えた際には国内での育成や強化による選手層の底上げや経済面も含めた安定性が課題だろう。幸い元代表選手らによる草の根の活動は続いており、また、2027年のオーストラリア大会に続き、2031年のアメリカ大会の開催が決まっており、南半球や時差の少ないアメリカ大陸での大会で国内の注目を集める好機とも言え、さらなる飛躍を期待したい。
世界ランキング(10月30日更新)
| 順位 | 変動(前週) | 協会(国・地域) | レート |
|---|---|---|---|
| 1 | →(1) | 南アフリカ | 94.54(↑) |
| 2 | ↑(3) | アイルランド | 90.57(→) |
| 3 | ↓(2) | ニュージーランド | 89.80(↓) |
| 4 | →(4) | フランス | 87.81(→) |
| 5 | →(5) | イングランド | 85.46(↑) |
| 6 | →(6) | スコットランド | 83.43(→) |
| 7 | →(7) | アルゼンチン | 80.68(↓) |
| 8 | →(8) | ウェールズ | 80.64(→) |
| 9 | →(9) | オーストラリア | 77.48(→) |
| 10 | →(10) | フィジー | 76.38(→) |
| 11 | →(11) | イタリア | 75.93(→) |
| 12 | →(12) | 日本 | 74,27(→) |
| 13 | →(13) | ポルトガル | 72.78(→) |
| 14 | →(14) | ジョージア | 72.68(→) |
| 15 | →(15) | サモア | 72.23(→) |
参考:トンガ=16位、ウルグアイ=17位、
ルーマニア=20位、ナミビア=21位、チリ=22位
※ 変動とレートの↑は上昇、↓は下降、→は変動なし

